コンサル事例 ③

3.隣地取得の是非
相談

■20年ほど前にハウスメーカーで建築した賃貸住宅の敷地の隣地が売りに出た。

■不動産は相応に持っているため無理に買う必要は無いが、買うべきか買わざるべきか?


提案・コンサル

■元々の敷地は約140坪。売り出された土地は約110坪。前面道路の広い方が目抜き通り、角地のもう
 一方が住宅街の生活道路に抜ける道路である。全体で250坪の角地となることによる賃貸住宅敷地全
 体の増価価値を考え購入を検討。                    

■当面は月極め駐車場か10年の事業用定期借地権(定借)で賃貸を検討。                  

■築20年の賃貸住宅は、ハウスメーカーが建てただけあって、老朽化というには程遠い。 しかし、近
 年になってから交通インフラが整備されたため、単身若年層が増えてきた地域であり間取りがファミ
 リー向けであるこの賃貸住宅が時代に合わなくなってきているのも事実。新規募集を停止し、退去交
 渉のため、入居者が残り1室になるまで待つ作戦を取った。        

■購入した角地は110坪のため、テナントには駐車場を必要としない業種を探した。結果、教育関係
 機関が借り受けることとなり、事業用定期借地権(当時は10年以上20年以下)にて土地を賃貸して、
 コンサル業務は一旦完了した。       

■この後5年ほど経過した時に、教育関係機関より『生徒も増え、増床のため建て替えをしたい。つい
 ては、これを機に長期の定借に契約を結び直して欲しい』と申し出があったが既存の賃貸住宅が残り
 1室となり、第1回目の退去交渉の感触が良かったため全体を250坪で使用できるタイミングと重
 なった、と判断。

■賃借人である教育関係機関との関係が良好だったので、250坪全体の賃借での定借に切り替えたか
 ったが、教育関係機関にとっては新年度となる4月に間に合うかどうかが重要であり、賃貸住宅入居
 者の退去が確定させられていなかった現状では、事業計画を狂わせて迷惑をかけてもいけない、と止
 むを得ず契約の結び直しを断念。教育関係機関も、『残念だが、もっと広い床面積の取れる敷地へ移
 転する』と再契約を断念。

■次の借地人探しとなった。コンビニ適地ではあったが、近隣にタバコ販売免許を保有する酒類量販店
 がありタバコの販売が必須であるコンビニは断念。また、近隣住民の一部より『高層建物による日照
 と24時間営業による夜間の静寂を守れない施設や煙や臭いを出すような飲食店は困る』と言われて
 おり、ターゲット業種の選択にも苦慮。

■建っていた教育関係機関の建物は中層ではあったものの、定借設定前に近隣住民の意向も伝えてあり
 それを受けて形状や配置にも配慮してくれていた。『借主さんの配慮に感謝したい』と当該地域住民
 と良好な関係であったので、その信頼と期待も考えなければならなかった。


結果

■全国展開している和洋菓子販売店舗用地として公正証書による事業用定期借地権(30年未満)にて賃
 貸。24時間営業の店舗では無いので大型車や一般車が早朝深夜に頻繁に出入りしたり、飲食店舗のよ
 うに周囲に煙や油その他の臭いが飛散することも少ない。また、イメージが重要である菓子店のため 奇麗に使ってくれるだろう、との期待も持てる。

■近隣からも『可愛らしいお店で街が華やかになって嬉しい』と好評であり、2階建以下の低層建物で
 あることも好感され『あの地主さんはいつも近隣のことを気遣ってくれる』と近隣住民の評判も更に
 良くなった。