コンサル事例 ②


2.将来もめないための事前財産分割
相談

■そろそろ相続税対策を考える年齢になってきた。相続した土地があり、『お前の相続の時に税金が足
 りなければこの土地を処分しなさい』と言われている。単純売却による相続税納税資金確保でも良い
 のだが、何かありそうな気がしないでもない。

■会社を継がせた長男には生活費を稼ぐ手段はある。長女は事情があって独身であり、今は若いから会
 社員をしているもののいつまで勤めるか分からないし仮に定年まで勤め上げたとしても年金支給まで
 には時間がかかる。


提案・コンサル              

■単純に売って納税資金として現金化または国債や不動産小口化・証券化商品で保有しておく方法、生
 命保険を利用する方法(FP事務所にも予め相談して例として提示)、借地または建て貸しして、今
 から地代・家賃の積み立てによる納税資金の確保に走る方法、その他の選択肢を提案・検討。   

■会社を継がせて経営している長男と依頼者ご本人は会社で毎日のように顔を合わせているが、長女に
 は、頻繁に会うことも無い。無いとは思いたいが、ご長女が『勝手に決めた』と不満に思うかもしれ
 ない。      

■できれば一度血の繋がった3人(依頼者の配偶者には自宅にて面談し『実行するかどうかは別にして
 検討する』という意思確認をしている)で会う機会は設けられないか?と提案し、相談者の自宅にて
 一同に会した。   

■ご長女は、『ある程度の財産があることは知っているが、法定相続で良いと思っていたので関心は無
 かった。ただ、自分の将来の収入には不安があった。そのことを考えてくれて嬉しい』と発言。          

■長女の何気ない『法定相続で』の一言が聞けたお蔭で『やはり法定相続を主張される可能性があった
 んだ』と方針が見えてきた。というのも、相談者が自身名義の土地を会社敷地として長男に継がせた
 法人へ貸し付けて相当地代を受領しており、それが相談者の資産の過半を占めていたため。仮に遺留
 分で納得してもらったとしても自社株まで考えると処分できない資産が多すぎて長女に渡す分が足り
 ないのではないか?と推測された。単純な不動産分割の相談から入ったが、実は典型的な事業用
 資産(事業用不動産以外では自社株式がその代表)承継問題へ発展する可能性を内包していたことが
 判明。   

■今回は当社のみで解決できるレベルの事案では無いため専門家の意見を仰ぎましょう、と進言。税理
 士に依頼し概算による遺産分割・相続納税シミュレーション(二次相続まで検討)を行なった。

■シミュレーションに基き土地の1/3を売却し、それを建築資金に充当。無借金で建てた賃貸住宅を生
 前贈与にてご長女に贈与することを提案。                    

■建物から得られる家賃はご長女の収入に。将来的に建物底地はご長女が相続し、土地建物ともご長女
 名義になる予定。将来受け取れるであろう資産が、現段階でいわば前払いの形で入ってくることにな
 ったため、ご長女も望外の喜びだった様子。 
            

■いつでも売却により換金できるように分筆後の2/3の土地も全部を建物敷地とせずに、建築基準法等
 の公法や駐車場の附置義務条例等、各種規制や指導を満たした上で、図面上は分筆して一部を月極め
 駐車場とした。          

■最後に『話し合いが上手く進むようなら是非』と公正証書遺言を勧めた。
 

結果
■推定相続人全員に話をオープンにして進めたのが奏功して、全員が『お父さんが良いならそれで良い
 』と不動産分割案がまとまったため、公正証書遺言へ進んだ。
 また、今回はここまでで一段落としたが、現在の円満な状況が変わりそうな風向きになれば元気なう
 ちに信託の活用も検討するよう助言した。

■依頼者自身が考えていたより自社株式等事業用資産の占める割合が多く、ご長女へ渡る財産は法定相
 続分より少なかったものの、配偶者からの『私の相続分はこんなに多くなくて良い。二次相続を考
 えれば尚更。』との発言を受けて、ご長女が『私は法定相続分に拘らない。賃貸住宅をもらって財産
 を先にもらうようなものだし』とコメント。

■結果的に、初めに集まって会話をしたことが後々のご長女の積極的な協力や円滑・円満な話し合いに
 繋がり大変喜ばれた。

■本来であれば、会社の顧問税理士に相談して始まる話と思われるものの、たまたまそれまで担当して
 貰っていたベテラン税理士の死去により別の会計事務所に変わったばかりで話し出せず、雑談の中で 『そういえばこんな相談にも乗って貰えるのかな?』とこちらに話があったのが始まりだが、今後、
 その税理士とご長男のお付き合いが続くことを考え、話を返して協力をお願いしたところ
とても上
 手く進んだため信頼関係の構築が一気に進んだ、と税理士にもとても喜ばれた。